「人間関係で辞めたと言ってよい?」「履歴書にはどこまで書く?」。保育士の転職理由は、本音をどう言い換えるかの前に、どの場面で・誰が・どこまで書くのかを分けると整理しやすくなります。このページでは、ハローワークの資料で場面ごとの扱いを確かめ、東京都の調査で多い理由を、次の園で確かめる条件に言い換えます。表1と表5は編集部の整理です。
保育士の転職理由は、履歴書・面接・離職票でどう分ける?
保育士の転職理由は、次の4つの場面で扱いが違います。上の3つは自分で書く・話すもので、いちばん下の離職票は、園とハローワークの手続きで決まるものです。
| 表1 場面 | 転職理由の扱い | 確かめた資料 |
|---|---|---|
| 履歴書の職歴欄 | 退職の理由は簡潔に書く(「一身上の都合により退職」「出産のため退職」「帰郷のため退職」「定年退職」「会社都合により退職」など) | ハローワーク「応募書類の作り方」 |
| 履歴書の志望動機の欄 | 前向きな理由は、この欄でていねいに書く | 同上 |
| 面接 | 志望の動機とアピールポイントは、面接で最もよく質問される項目。書類に書いた内容と説明をそろえる | 同上 |
| 離職票(雇用保険の手続き) | 離職理由は、園が出す離職証明書に記載される。本人が離職前に内容を確かめ、ハローワークが判定する | ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」 |
出典:厚生労働省職業安定局・都道府県労働局・ハローワーク「応募書類の作り方」(令和8年5月発行)、ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」。取得日:2026年10月6日。
履歴書の職歴欄:退職理由は簡潔に、園の場合は「退職」と書く
ハローワークのパンフレットは、職歴欄の退職の理由を、表1の例のように簡潔に記載するとしています。勤め先が会社でない場合(学校・病院・個人事業所・各種団体・官公庁など)は、「勤務(または入職)」と「退職」の語を使うとも書かれています。社会福祉法人や学校法人、自治体が運営する園は会社ではないので、「入社・退社」ではなく「入職・退職」と書けます。株式会社が運営する園は、会社の書き方(入社・退社、または退職)になります。職歴の書き方は保育士の職務経歴書の記事に、資格欄の書き方は保育士の履歴書の記事にまとめています。
履歴書の志望動機の欄:前向きな理由はここに書く
同じパンフレットは、退職の理由が前向きなものである場合は、「志望の動機、アピールポイント」の欄でていねいに記載するよう案内しています。職歴欄に長い説明を書く必要はありません。志望動機に使う材料の集め方は、保育士の志望動機の記事で整理しています。
保育士の転職理由を、面接で伝える前に整理する
保育士の転職理由を面接でどう話すと採用されやすいかを示す公的な資料は、見つかりませんでした。この記事では、話し方の良し悪しは判断せず、準備の手順だけを並べます。
- 勤め先ごとに、辞めた理由を書き出す。 ハローワークの「職務経歴書の作り方 別冊ワークブック」(令和8年5月発行)は、最初のシートに、勤務先ごとの在職期間・企業名と並べて「退職理由」を書く欄を設けています。応募書類を作る前に、自分用のメモとして整理する欄です。
- 理由を、次の園で確かめたい条件に言い換える。 言い換えの表は、下の表5にあります。
- 応募先で確かめた事実と組み合わせる。 求人票、園の公表情報、見学で確かめたことのうち、2の条件に当たるものを選びます。
- 書類と面接の説明をそろえる。 履歴書の志望動機の欄に書いた内容と、面接での説明が食い違わないようにします。
話すときに気をつけることが2つあります。
- 前の職場の子どもや保護者が分かる話はしない。 保育士には、業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない義務があり、保育士でなくなった後も同じです(児童福祉法第18条の22)。
- 事実と違う理由を作らない。 この記事の言い換えは、理由を隠すためのものではなく、次の園で何を確かめたいかをはっきりさせるためのものです。
回答の例文は、この記事には載せていません。面接で聞かれうる質問の区分と、答えにくい質問をされたときの対応は、保育士の面接の記事にあります。
保育士の転職理由には何が多い?公的な調査で確かめる
保育士の転職理由は、東京都が保育士の登録者に行った調査で確かめられます。いま保育士として働いている人のうち、以前に別の職場で保育士として働いたことがある人は36.4%で、その人たちに、前の職場を辞めた理由をたずねています。
別の園から移った保育士の退職理由(東京都の調査)
| 表2 順位 | 以前の職場を辞めた理由(n=4,110) | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 職場の人間関係 | 38.1% |
| 2 | 仕事量が多い | 25.2% |
| 3 | 労働時間が長い | 20.9% |
| 4 | 給料が安い | 20.6% |
| 5 | 保育所や法人の保育理念に共感できなかった | 18.1% |
| 6 | 結婚 | 15.4% |
| 7 | 妊娠・出産 | 10.9% |
| 8 | 健康上の理由(体力含む) | 10.6% |
| 9 | 転居 | 10.1% |
| 10 | 雇用期間満了 | 7.7% |
出典:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」の「調査結果の詳細」。複数回答。調査の対象は、2017年4月から2022年3月までの東京都保育士登録者等52,856人(有効回収数18,239件、有効回収率39.7%)。調査の実施は2022年7月25日〜8月14日。ページの更新日は2023年4月13日。取得日:2026年10月9日。
表2は、いま保育士として働いている人(n=11,277)のうち、以前に別の職場で保育士として働いたことがある人の回答です。東京都に保育士登録をした人の調査で、全国の保育士の割合を表すものではありません。
保育士を辞めた人・退職を考えている人の退職理由(同じ調査)
同じ調査は、保育士の仕事から離れた人と、いま働いていて退職を考えている人にも、理由をたずねています。
| 表3 順位 | 過去に保育士として働いていた人が、保育士を辞めた理由(n=2,241) | いま保育士として働いていて、退職を考えている人の理由(n=2,399) |
|---|---|---|
| 1 | 職場の人間関係 31.5% | 給料が安い 61.6% |
| 2 | 仕事量が多い 23.1% | 仕事量が多い 54.0% |
| 3 | 給料が安い 22.1% | 労働時間が長い 35.4% |
| 4 | 健康上の理由(体力含む) 20.6% | 職場の人間関係 30.1% |
| 5 | 労働時間が長い 18.6% | 他業種への興味 28.9% |
出典:同じ報告書の「結果の概要」と「調査結果の概要」。どちらも複数回答。取得日:2026年10月6日。
- 左の列は、別の園に移った人の理由ではありません。 過去に保育士として働き、調査のときには保育士として働いていなかった人の回答です。
- 右の列は、「今後は保育士を辞めたい」と答えた人の理由です。 同じ調査で、いま保育士として働いている人の78.7%は「今後も保育士として働き続けたい」と答えています。
- 3つの質問は、たずねた相手が違います。園を移った人と保育士を辞めた人では「職場の人間関係」がいちばん多く、退職を考えている人では「給料が安い」がいちばん多い、という違いがあります。全国の保育所等を通じた調査の結果は、保育士を辞めたいときの相談先の記事に載せています。
転職した人が前の職場を辞めた理由(全産業の調査)
厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」は、2025年の1年間に転職して入職した人が、前の職場を辞めた理由を調べています。保育士だけの数字ではなく、主な16の産業の、常用労働者5人以上の事業所が対象です。
| 表4 女性の転職入職者が前職を辞めた理由(上位。全産業) | 割合 |
|---|---|
| その他の個人的理由 | 23.8% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 12.9% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 11.5% |
| 定年・契約期間の満了 | 9.8% |
| 給料等収入が少なかった | 8.6% |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」の「転職入職者の状況」表5(2026年8月31日公表)。理由を1つ選ぶ形の集計で、表2・表3の複数回答とは比べられません。取得日:2026年10月6日。
女性の値を載せたのは、東京都の調査の回答者の94.0%が女性だからです。同じ表の男性は、「その他の個人的理由」16.8%、「定年・契約期間の満了」16.1%、「その他の理由(出向等を含む)」12.1%、「給料等収入が少なかった」9.9%の順でした。
保育士の転職理由を、次の園で確かめる条件に言い換える
保育士の転職理由は、「前の園の何がいやだったか」のままだと、次の園を選ぶ基準になりません。表2・表3に出てくる理由を、次の園で確かめる条件に言い換え、このサイトの質問表につなげたのが次の表です。
| 表5 転職理由 | 次の園で確かめる条件 | 使える質問表・照合表 |
|---|---|---|
| 職場の人間関係 | 相談の体制、職員の分担の決め方 | 人間関係の記事の5問 |
| 仕事量が多い・労働時間が長い | 残業の記録方法と実績、書類を書く時間、持ち帰りの決まり | 残業の記事の4問、持ち帰り仕事の記事の8問 |
| 給料が安い | 基本給・手当・処遇改善分の内訳、昇給の条件 | 給料の照合表、処遇改善の記事の記録の残し方 |
| 健康上の理由(体力含む)、妊娠・出産、子育て・家事 | 勤務時間と休みの選択肢、雇用形態 | 休みの記事の8問 |
| 保護者対応の大変さ | 保護者対応を一人で抱えない体制があるか | 保護者対応の記事の7問 |
| 保育所や法人の保育理念に共感できなかった | 園の保育の方針と、公表されている情報 | 志望動機の記事の材料の集め方 |
言い換えた条件は、求人票・面接・労働条件通知書の3つの時点で同じ項目を見比べると、食い違いに気づきやすくなります。見比べる表は、転職の失敗を防ぐ照合表にあります。
応募先に直接聞きにくい条件は、紹介会社に確認を頼む方法もあります。頼めることは会社によって違うので、保育士の転職エージェントの比較で確かめてください。
保育士の転職理由と、離職票の離職理由は別に決まる
保育士の転職理由として面接で話す内容と、離職票に書かれる「離職理由」は、別の手続きのものです。離職票は、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の手続きに使う書類です。
ハローワークインターネットサービスは、手続きを次のように説明しています。
- 離職の前: 会社がハローワークに提出する離職証明書には、離職前に本人が氏名を記載することになっているので、離職理由などの記載内容も確認する。
- 離職の後: ハローワークは、受給資格を決めるときに、離職理由も判定する。
- 異議があるとき: 離職理由に異議がある場合(実際は事業主からの退職勧奨なのに、自己都合の退職とされている場合など)は、ハローワークに相談する。ハローワークが事実関係を調べたうえで判定する。
園から渡された離職証明書の離職理由が実際と違うと感じたら、そのままにせず、内容を確かめてください。年度の途中で辞める場合の書類の流れは、保育士の年度途中の退職の記事にあります。
保育士の転職理由について、この記事では分からないこと
保育士の転職理由について、この記事で答えられないことを書いておきます。
- 採用されやすい転職理由や話し方: 根拠にできる資料がなく、判断していません。例文も載せていません。
- 全国の保育士の割合: 表2・表3は東京都の登録者の調査、表4は全産業の調査です。
- 園を移った理由の、年代別・地域別の違い: この記事では、全体の値だけを載せています。
- 離職理由によって雇用保険の給付がどう変わるか: 個別の判定はハローワークが行います。この記事では扱っていません。
- 公立の園の採用試験での扱い: 自治体の採用試験は別の手続きで、この記事では確認していません。
保育士の転職理由でよくある質問
保育士の転職理由は、履歴書に詳しく書いたほうがよいですか?
ハローワークのパンフレットは、職歴欄の退職の理由を「一身上の都合により退職」などのように簡潔に記載するとしています。前向きな理由がある場合は、志望の動機・アピールポイントの欄に書くよう案内しています。
保育士の転職理由で多いものは何ですか?
東京都の調査(2022年実施)では、いま働いている保育士が以前の職場を辞めた理由は「職場の人間関係」が38.1%で最も多く、次いで「仕事量が多い」25.2%、「労働時間が長い」20.9%、「給料が安い」20.6%でした(複数回答、n=4,110)。東京都に保育士登録をした人の調査です。
人間関係が理由で転職する場合、面接でどう話せばよいですか?
採用されやすい話し方を示す公的な資料はなく、この記事では判断していません。編集部の整理としては、理由を次の園で確かめたい条件(相談の体制、職員の分担の決め方など)に言い換え、応募先で確かめた事実と合わせて話す方法があります。前の職場の子どもや保護者が分かる話はしないようにします。
離職票の離職理由と、面接で話す転職理由は関係がありますか?
別の書類・別の手続きです。離職票の離職理由は、園がハローワークに出す離職証明書に記載され、雇用保険の受給資格を決めるときにハローワークが判定します。離職証明書の離職理由は、離職前に本人が確認することになっています。
転職理由が家庭の事情のとき、面接で家族のことを詳しく聞かれたら?
厚生労働省は、家族に関することなどを、就職差別につながるおそれがある事項として、面接で尋ねないよう事業主に求めています。対応の方法と相談先は、保育士の面接の記事にまとめています。
更新履歴
2026年10月6日:ハローワーク「応募書類の作り方」「職務経歴書の作り方 別冊ワークブック」(令和8年5月発行)、ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」、東京都「令和4年度東京都保育士実態調査」、厚生労働省「令和7年雇用動向調査」を確認して公開。場面ごとの扱いの表と、理由を次の園で確かめる条件に言い換える表を掲載。 2026年10月9日:訂正。東京都の調査に、いま働いている保育士が以前の職場を辞めた理由の質問(n=4,110)があることを確かめ、その表を足した。「園を移った理由だけを集めた公的な統計は見つからなかった」という記述は誤りだったので直した。
